ニンフェンブルク
1895〜1918年 緑色のプリントで王冠と盾、Nymphenburgの窯印
コーヒー・カップ:H=58mm、D=58mm/ソーサー:D=115mm
 豊かな色彩で南国風の想像上の鳥が描かれている。止まり木の枝ごとクローズアップして全景から切り取ったような独特の表現だが、このようなデザインの源泉は18世紀マイセン窯の絵付けに遡ることができる(美術館第一展示室「マイセン」のページ参照)。
 形状は同窯のコーヒー・カップに多くの作例が残っており、「ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑」p.166〜8に、本品と同一形状の作品が三点掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 







ニンフェンブルク
1905〜10年 緑色のプリントで王冠と盾、 Nymphenburg の窯印
コーヒー・カップ:H=47mm、D=47mm/ソーサー:D=96mm
 ルドルフ・ジークは1877年にローゼンハイムに生まれた絵付け師で、ニンフェンブルク窯に多くの風景画を残した。彼は冬景色・雪景色を最も得意とし、1906年に発表したバイエルンの早春をモティーフとした「雪解け」が絶賛された。画面手前には純白の雪に覆われた丘、雪解け水を運ぶ暗い谷川をはさんで向こうには針葉樹林の山、茶ネズミ色のどんよりと重苦しい空が描かれたこの作品には、山国の遅い春の息吹の僅かな手応えが感じられるが、静寂の諦めの中に深い寂寥感が漂っている。この「雪解け」は、ニンフェンブルク窯で働く同僚の戦禍による死を悼んで、職工組合のために描かれたもので、この成功以来ジークは独特の画風で斯界の第一人者となってゆく。
 ここでは6点もの彼の絵付けを紹介したので、その芸風については「百分は一見に如かず」の喩え通り、今更申し述べるまでもないが、ここに見る風景画は、ごく小さなカップの上に描かれているため、表現に限界があるということを勘案して鑑賞していただきたい。ジークの絵の本質は極めて観察に優れており、イラスト調・デフォルメ調とは無縁のものであり、伸びやかで詩情溢れる奥深い精神世界が展開する画風ということができる。
 この6点のうち、畑と農夫と落葉した木が見える作品は、「アンティーク・カップ&ソウサー」p.176 に別の作品の掲載がある。絵のデザインが若干異なっているので、ご参照いただきたい。
 






ニンフェンブルク
1905〜10年 緑色のプリントで王冠と盾、 Nymphenburg の窯印
コーヒー・カップ:H=46mm、D=48mm/ソーサー:D=96mm
 本品の造型はアデルベルト・ニーマイヤー、絵付けはパウル・ルートヴィヒ・トルーストで、このコンビの一連の作品の中の一つである。金彩の細いバンドが一本引かれ、具象から離れた独自の花綱が描かれている。
 この絵付け師の他の作例が「アンティーク・カップ&ソウサー」p.176 に掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 

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