ルートヴィヒスブルク
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1760〜90年 手書きの染付でCCのモノグラムの窯印
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コーヒー・カップ:H=67mm、D=67mm/ソーサー:D=130mm
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白磁はリングラーが焼成法を伝えたウィーン式の真正硬質磁器で、質感はウィーン窯のそれとよく似ている。 風景画はカップ、ソーサーともに湖畔の風景と釣り人を描いており、どちらも対岸に薄い黄色の顔料を使って建物を描いている。最前景に赤茶色の岩を配し、画面の端に立木を描く、ウィーン・チューリヒ様式の構図が用いられている。 カップとソーサーの口縁には、ピンク地に金彩の十字文様をあしらったメダイヨンが五連に、グリザイユ(灰色単色のモノクローム画)で、建物や人物、樹木などを小さいカルトゥーシュ内に描いた風景画が四種類(カップは三種類)描かれている。この口縁ボーダー装飾は、ルートヴィヒスブルク窯で本来加飾されたオリジナルの絵付けではなく、本品が枠装飾なしの風景画だけの食器であることを「寂しい」と考えた美術・骨董商などが、作品の価値を上げようとする目的で後世に補筆してしまった図柄である。後補部分は顔料の品質が悪い上に、低火度焼成であるため色絵に艶がなく、筆捌きも稚拙で描線に崩れが散見される。したがって、ルートヴィヒスブルク窯で製造されていた磁器作品の水準からは遠いと言わざるを得ない。 金彩も後補の部分には濁りがあるが、ハンドル部分などにもともとルートヴィヒスブルク窯が着彩した本来の金彩は、金属的な輝きと滑らかな表面を持っている。 |
ルートヴィヒスブルク
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1770〜90年 手書きの染付で鹿の角を模した窯印
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ティー・カップ:H=47mm、D=74mm/ソーサー:D=135mm
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ヴュルッテンベルク公爵家の盾の紋章の一部に使われる、三本の鹿の角のデザインを引用した窯印が書かれている。釉薬は透明だが多少飴のようで、前掲作とは質感が異なる。細かい灰降りも見られる。花絵は大味で、少々現実味に欠ける。細い縦縞が浅く付いた原型で成型されており、またスクエア・ハンドルはこのような逆台形のカップに頻繁に取りつけられたことで知られる。このハンドルは「フレンチ・ハンドル」とも呼ばれるが、ドイツ圏の各窯が多くの作例を残している。 |
ルートヴィヒスブルク
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1760〜90年 手書きの染付でCCのモノグラムと王冠の窯印
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ティー・カップ:H=74mm、D=49mm/ソーサー:D=132mm
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このカップは前掲の作品と同じモールドでハンドルを作り、本体には外側全面に鱗文様が造形されている。この鱗文様はルートヴィヒスブルクのテーブルウエアではよく知られるもので、現在ドイツで作られている「ルートヴィヒスブルク」(博物館収蔵品などの古いルートヴィヒスブルク窯をコピーする現代のメーカー。ルートヴィヒスブルク窯は1824年に廃窯し、現代までの継続性はない)のティー・カップにも、このデザインがみられる。 素磁はやや厚めだが軽く、クリーム色がかって見えるのは釉薬の問題で、中の素磁自体は大変白い。ウィーンからリングラーによって伝えられた白磁の優秀性を物語る作品である。 |
ルートヴィヒスブルク
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1760〜90年 手書きの染付でCCのモノグラムの窯印
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ティー・カップ:H=46mm、D=74mm/ソーサー:D=137mm
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口縁に独特の細かいエンボス装飾がある。軽くて焼き締まった素磁だが、カップ、ソーサーともにかなり歪みがある。美しく強い発色のエナメルでしっかりした絵付けがされており、ソーサーのメインの花が裏から描かれているのが面白い。本品はセットで伝世しており、他のソーサーにも裏描きの花絵が施されているため、このようなデザインによる統一企画だったとみられる。 |
ルートヴィヒスブルク
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1765〜75年 CCのモノグラムの窯印
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コーヒーキャン:H=62mm、D=62mm/ソーサー:D=133mm
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1758年にヴュルッテンベルク公カール・オイゲンによって設立されたルートヴィヒスブルク窯は、1760年にウィーン窯出身のアルカニスト(製磁最終奥義修得者)、ヨーゼフ・ヤーコプ・リングラーを招いて硬質白磁の焼成に成功した。この後リングラーは他窯に移動せず、ここを安住の地と定めて残りの生涯をルートヴィヒスブルクで過ごした。(「アンティーク・カップ&ソウサー」p.233参照) |