エドゥアール・オノレ
1820〜30年 褐色のプリントで Ed. HONORE A PARISの窯印
ティー・カップ:H=55mm、D=88mm/ソーサー:D=129mm
 フランソワ・モリス・オノレの長男エドゥアール・オノレは、ピエール・ルイ・ダゴティのショウルームがあったブルヴァール・モンパルナスの工場を引き継いで、1820年から経営を始めた。エドゥアールとテオドールの兄弟は、1816〜1820年まで事業提携をしていたダゴティ旧所有二カ所の工場であるブルヴァール・ポワッソニエールのシャンプルー工場とブルヴァール・モンパルナスのシェブルーズ工場において、ダゴティ風の造型による製品を作った。
 1855年にエドゥアールが亡くなると、事業を継承した息子のオスカルが1865年までの十年間、工場を経営した。

 本品はカップが十二角形・絵付けの区画が六分割、ソーサーが十六角形・絵付けの区画が八分割で、黒色の背景で塗り込めた多色の立花文と、紫地に金彩で幻想的な花絵が描かれている。カップ見込みとソーサー中央にはイスラーム風の幾何学文様があしらわれ、カップ口縁の内側にはデザイン化された花文様が連続している。
 カップの底部近くには白抜きで圏線を二本残した金彩が施され、この部分は磨かれて金が光っている。
 「アンティーク・カップ&ソウサー」p.84に、本品と柄違いの作品を掲載してあるのでご参照いただきたい。
 






エドゥアール・オノレ
1820〜25年 褐色のプリントで“E.D.HONORE a PARIS”の窯印
ティー・カップ:H=48mm、D=82mm/ソーサー:D=152mm
 オノレ窯は1785年に設立され、創立者フランソワ・モリス・オノレがパリのブルヴァール・サン・アントワーヌに工場を置いて経営していた。1810年にはリモージュ近くのラ・セイニーの硬質磁器工場を買収した。1812年からは息子であるエドゥアールとテオドール兄弟が経営に参加し、1816年以降はピエール・ルイ・ダゴティが所有するモンパルナス郊外のシェヴルーズ工場と提携した。その後1820年に両者は別れたが、それぞれの関係地に勢力を保って営業を続け、ダゴティはパリを離れてラ・セイニーに、オノレ兄弟はパリ・シャンプルーのブルヴァール・ア・ポワッソニエール4番地に本拠地を移転した。このポワッソニエールという土地は、もともとダゴティが18世紀以来、自分の工場を所有していた場所である。一方ラ・セイニー工場は、1822年にパリの有力磁器業者ドミニーク・ドニュエルに売却された。

 本品はエドゥアール・オノレがシャンプルーの旧ダゴティ工場で製造した作品で、ペディスタル付きの浅いカップに、末端部が羽状のリング・ハンドルが取り付けられている。
 クリーム色の地には組紐リボンと立花スクロール文様が金彩で描かれている。ソーサーには一か所「S」のイニシャル文字が書き込まれている。カップには緑色のカズラ類の実が描かれている。
 






フランソワ・モリス・オノレ
1800〜15年
コーヒー・カップ:H=66mm、D=76mm/スタンド:D=123mm
 F.M.オノレ窯は、フランソワ・モリス・オノレによって、1785年、パリのブルヴァール・サン・アントワーヌに開設された。ブルボン王家・フランス政府は、パリ市警を通じて磁器民窯への統制を強め、1784年にパリ在の九窯に対してのみ、従来禁止されていた色絵・金彩の使用を許可した。色絵付けや金彩を使用した製品が作れないために弱体化していたメヌスィー窯やシャンティーイ窯などのフランス伝統窯業は、この勅許にもれたために結局廃窯や売却への道を辿った。オノレ窯は勅許の翌年に開窯したが、創業当初から色絵・金彩の作品が残されており、フランソワ・モリス・オノレがパリ市警との間に強力な縁故関係を持っていたことを伺わせる。
 1812年以降は二人の息子エドゥアールとテオドールを経営に参画させ、事業は繁栄した。1816年からは同じくパリの有力窯業者で、ロシアに販路を持っていたピエール・ルイ・ダゴティと事業提携した。ダゴティはナポレオンの御用窯であったが、1812年にナポレオンがモスクワから敗退するとロシアとの通商が断ち切られ、やがて1815年にナポレオンがセント・ヘレナ島に流罪になった後はフランス国内でも嫌われて、商売が凋落していた。両者の提携は1820年まで四年間続き、以後は契約を延長することなくパートナー・シップは終わりを告げた。

 この作品は19世紀初頭に製作された「エンパイア・シェイプ」のコーヒー・カップである。「エンパイア」とは皇帝ナポレオンが好んだ「エンパイア(アンピール)様式」の意味で、ギリシア陶器(アンフォラなど)の形状を模したシェイプになっている。
 ハンドルの上端部には扇状に開いた羽飾りがあり、下端部には白鳥の頭が造形されている。赤紫色とクリーム色に塗り分けられた地色に、ギリシア風の水差しが描かれている。
 「アンティーク・カップ&ソウサー」p.84にF.M.オノレ窯の作品が掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 

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