ニューホール
1787〜90年
コーヒー・カップ:H=66mm、D=68mm/ソーサー:D=130mm

 ニューホール窯第二期初頭の数年間に製造されたコーヒー・カップである。やや青灰色がかった硬質磁器が用いられ、造形は鋭く、高台など細部まで大変きちんとした仕上がりになっている。
 この図柄は153番のパターンといい、同窯の染付&金彩装飾の中でも傑出して優れたデザインとして知られる。ただし「マザリーン・ブルー」と呼ばれる染付顔料は、水っぽい状態で描かれるためムラが多く、不安定なのが特徴で、色合いは赤みが少なく、くすんだ鈍い藍色を呈している。
 染付の上には金彩でドットの星と八稜星が上下交互に配置され、白磁の部分にもドットの星と花を交互につないだ華やかなフェストゥーンと、単独の八稜星が描かれている。染付のデザインも磁器のフルート造形に添った出入りの凹凸になっており、金彩とあいまってリズミカルな図柄になっている。ソーサー中央には金彩で百合が一輪描かれている。







ダービー
1787〜95年 活字体でKの刻印
ティー・ボウル:H=53mm、D=79mm/ソーサー:D=131mm

 18世紀末、ダービー窯をウィリアム・デュズベリ二世が経営した短い時期に製造されたティーボウルで、1795年からマイケル・キーンが資本参加する以前の作品である。ダービー窯は高級品中心のメーカーで、しかも染付の作例は少なかったが、本品のような簡素なデザインの作品も残されている。ただし染付・金彩ともに仕上がりは精密とは言えない。本品は普及品であり、18世紀ダービー窯の技術力を、この程度のものと考えるのは誤りである。
 赤みがある明るい藍色の半円文様は「オペラ」と呼ばれる緞帳(カーテン)風で、上に金彩で星(ドット文)が施されている。染付と白磁の境目には金彩の二重線の中に、鳥の足跡風の百合かアイビーのアレンジ文様(三葉文)とドットの星が交互にあしらわれている。ティー・ボウル内側にのみロゼットの変形文様が描かれている。
 形状は高台がないビュート型で、三か所の焼成痕がある。白磁はフリット質の軟質磁器で、滑らかな釉薬がかけられている。







カーフレイ
1780〜90年 染付でSの窯印
コーヒー・カップ:H=66mm、D=67mm/ソーサー:D=136mm

 バーティカル・フルート型のカップに「カーフレイの耳型ハンドル」が取り付けられている。素材は同時期のウースター窯と共通のステアタイト磁器である。
 カーフレイ窯は楕円文様の染付デザインのティー・ウエアを大量に製造しており、本品もその企画のうちの一点であるが、金彩文様に多彩なヴァリエーションがある。ここではフランス由来のリボン柄が染付部分に添って施され、アイビーをアレンジした三葉文とドットの星文が交互にあしらわれたフランス風のフェストゥーンが描かれている。リボンは染付メダイヨンの上と下をそれぞれ飾り、フェストゥーンはメダイヨンを繋ぐデザインになっている。明るくムラのない安定した発色の染付メダイヨンの上には、ドットの星文が七個描かれている。
 同様の染付メダイヨンに金彩装飾の作品が「アンティーク・カップ&ソウサー」p.48に掲載してあるので、ご参照いただきたい。

 

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