ベルリン
1913年 染付で王笏の焼成印、オレンジの上絵プリントで宝珠とKPMの加飾印
アイスクリーム・カップ:H=61mm、D=91mm/スタンド:D=135mm
 本品は王立磁器工場時代末期のベルリン窯で製造された作品で、カップにはネオ・クラシック装飾様式に属する白鳥の首型ハンドルが付き、ソーサーは形状・金彩ともにベルリン窯で量産された一般的なデザインになっている(「ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑」p.170右下参照)。
 カップの表裏二面に、ロココ風の草とリボンによる盛金の枠装飾があり、白抜きされた円形の中に、それぞれ水仙と桜を中心とする三種類ずつの花束絵が描かれている。水彩画のような柔らかい花の描法はベルリン窯伝統の技術で、本品と同様の水仙絵が「アンティーク・カップ&ソウサー」p.146〜7に掲載してあるので、ご参照いただきたい。
 






ベルリン
1922年 染付で王笏の焼成印、オレンジの上絵プリントで宝珠とKPMの加飾印
コーヒー・カップ:H=88mm、D=77mm/ソーサー:D=138mm
 本品の形状は、ビーダーマイヤー装飾様式の影響によって19世紀前半に流行した「ベル・シェイプ」で、20世紀のベルリン国立(あるいは州立)磁器工場を通して今日なお製造され続けているデザインである。
 磁器と釉薬は極めて上質で、カップにはパンジーを中心とする四種類の花束、ソーサーには三種類の小花が散らされている。いずれも陰影を伴う精密な筆致で描かれている。
 






ベルリン
1926年 染付で王笏の焼成印、オレンジの上絵プリントで宝珠とKPMの加飾印
コーヒー・カップ:H=68mm、D=65mm/ソーサー:D=133mm
 ベルリン国立磁器工場で1926年に製作されたカップで、絵柄はネオ・クラシック期〜ビーダーマイヤー期の同窯の作品の伝統を引き継ぐデザインを、現代的にアレンジ・簡略化している。形状は逆台形のカップにスクエア(フレンチ)・ハンドルという、18世紀半ばのドイツ圏で流行した古いシェイプをそのまま写し取ったものに、18世紀当時にはほとんど見られなかったペディスタルを付加している。
 ややくすんだ青色と、輝きのないマットな金彩の色合いは、近代ベルリン窯に特有のものである。
 なお、ベルリンが属するプロイセン王国は、第一次世界大戦終結の1918年以降は崩壊しており、本品製作時はかつての王国が州となった後だったため、「国立」あるいは「州立」のベルリン窯=「SPMベルリン」とするのが正しい。窯印には「KPM」の文字があるが、これはデザイン上の表記であり、便宜的なものに過ぎない(ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑p.79のコラム7参照)。
 

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