アヴィランド&Co.
1905〜31年 緑色のエナメルでアヴィランド社の焼成印、金彩で加飾印
コーヒー・カップ:H=55mm、D=54mm/ソーサー:D=112mm
 デイヴィッド・アヴィランド社は、北アメリカの磁器輸入販売商デイヴィッド・アヴィランドが、1842年に渡仏してリモージュに開設した絵付け専門工房に始まる。この工房は1847年から営業を開始し、1864年には窯を建設して翌年以降は自社で硬質白磁を製造・販売できるようになった。
 1892年にはデイヴィッドの息子で長男のシャルル・エドゥアールと、次男テオドールが会社経営を巡る対立を激化させ、テオドールは自ら新企業「テオドール・アヴィランド社」を設立した。この会社は本家アヴィランド社とは何の資本関係もない別法人である。
 1921年にシャルル・エドゥアールが亡くなり、経営は息子のジョルジュが担当したが、1929〜30年にかけて波及した世界恐慌の嵐に耐えられず、本家アヴィランド社は1931年に倒産した。その後ほとんど全ての資産が分割して売却され、同社は再建されなかった。
 1941年に、テオドール・アヴィランドの息子ウィリアムが、人手に渡っていた本家アヴィランド社の旧商標権を買い取ったため、今日ではテオドール・アヴィランド社が「アヴィランド」と称している。したがって現代のアヴィランド社の創立は、1892年とするのが正しい。

 本品は、薄手で透き通るような上質の白磁に、チューリップなどの花を図案化したアラベスク文様がプリントで施された、イズラミックな作品である。カップとソーサーの口縁には、ハート型を逆さにしたように見える「パルメット文(椰子文)」が、アシッド・ギルディング(腐食地文金彩)でバンド状に連なって仕上げられ、ハンドルにはレイズド・ギルディング(盛り上げ金彩)で三本の線状文とドットが交互に描き込まれている。
 世界恐慌以前の繁栄を謳歌していた北米向きに輸出された高価なコーヒー・カップで、磁器の薄さ、金の輝き、凝った盛り金など、贅沢品としての当時の食器セットの姿を今日に伝えている。

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